衆議院で3分2を超す圧倒的な議席を占める与党自民党が、「国旗損壊罪」の導入に向けたプロジェクトチームの会合を開き、党内議論に着手すると3月31日の新聞各紙が伝えています。
報道によれば、PTでは審議のハードルが低い議員立法の形を取ることで国会提出を急ぎ、今国会中にも法整備を終える方向で議論が進んでいる由。しかし、世論の中には、憲法が保障する「表現の自由」を侵害しかねないとの懸念は根強く、また党内においても「罰則」を導入することへの慎重論があって、取りまとめには難航が予想されるというのがメディアの見方です。
一方、自民の小林鷹之政調会長は3月26日の記者会見で、「外国の国旗(損壊)に罰則があり、日本国旗にはない。非常に大きな違和感を感じる」と話し、導入の必要性を強調したとのこと。高市早苗首相は野党時代の2012年に国旗損壊罪を新設する刑法改正案の国会提出を主導した経緯があり、3月17日には既に維新の吉村洋文代表と今国会中の成立を目指す方針を確認したとされています。
もちろん、参議院では少数与党の状況が続いているわけですが、執行部では、主張の重なる参政党の賛同を得て、今国会での成立は可能とみているようです。
さて、小林政調会長が言うように、刑法に規定されている「外国国章損壊罪」では、「外国に侮辱を加える目的」で他国の国旗などを損壊した場合には「2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金」を科す…とされています。なので、確かに「外国の国旗を棄損すると罰せられるのに、日の丸を棄損してもお咎めなしってのはおかしいだろ」という与党の主張は分からないではありません。
しかし、国際法に則り儀礼的な敬意を払うことが求められる外国の国旗と、国民統合のシンボルとしての自国の国旗ではその意味は異なるような気もします。
例えば、海外での反日デモの映像か何かで、日の丸が踏みにじられたり、火を付けられたりしている光景を見るのは、日本人にとって(理由がどうあれ)気分の良い物ではありません。自分がやられて嫌なことは人にもしない。だからこそ、他国の国旗には敬意を払う必要があるのでしょう。
一方、例えばこれから先、(日本の)支配層が体制の維持や国民を扇動する目的で国旗を不当に権威付け、利用しようとするようなことだってないわけではありません。そしてそのような場合、そこに反発する勢力が新たな旗を掲げる場合もあるでしょう。
そうした際、(この「国旗損壊罪」を盾に)市民の意思表示や表現の自由が「国旗の損壊」を理由に侵されたり、「国旗を疎かに扱った」という理由で国民が逮捕されたりすることがまかり通るようになれば、後世に禍根を残しかねません。
もっとも、そんなこともあって自民党内にも導入への異論が根強くあるようで、犯罪としての構成要件や罰則の軽重も含め、これから様々な議論が行われる見込みとのこと。本件に関しては、私自身も、そうした国民的な議論を期待する一人です。
外国国章損壊罪は外国政府の請求を起訴の要件とする親告罪で、これは「外交への悪影響を防ぐ」のが立法目的だから。日の丸を国内で損壊しても外交問題になるとは考えにくく、「国旗を大切に思う国民の感情を守る」と会見で語った小林政調会の立法目的が(国民の間に)納得感をもって受け入れられるためには、それなりの努力が必要なような気がします。
どのような行為を対象にするか、濫用を防ぐための歯止めはあるのか…規定の仕方次第では、同法が芸術活動や政治活動を萎縮させ、憲法の「思想・良心の自由」や「表現の自由」に抵触しかねないのはいうまでもありません。
国民と国旗はどちらが大切か…と言ってしまえば極論かもしれませんが、力や脅しで「旗の下」に集まらせようとする自民党の(一部の人々の)権威主義的な振る舞いには、やはり不信感がぬぐえません。
国旗を巡る議論はぜひ、その象徴するものに対する敬意に溢れたものであってほしいと心から願わずにはいられません。